不妊症という定義はご承知のように妊娠を望みながら夫婦生活を二年間過ごしてもその兆候がないものを言いますが、現代の結婚年齢はこれが定義された時より高くなっていますので概ね一年間過ごしてもその兆候がなければ治療を開始するのが望ましいと臨床の場では言われています。今は妊娠を望む7〜8組のカップルに一組は何らかの不妊の状態にあるという統計が示すように、妊娠を望みながらそれに至らないカップルは多く、また不妊の原因も様々で高度な医学的処置を必要とするものから体質や妊娠に対する思い違いなど様々な要因があります。治療を希望するカップルは男性女性のどちらか一方の治療にせよ、夫婦でよく相談し不妊のタイプを見つけ出すように的確な検査を受け継続的な治療を行う事が大切になります。
蓬莱堂のお問い合わせの中には、冷え性や生理痛、婦人科系のご相談を多く頂いております。その中には、不妊症の治療を希望しているにも関わらず上記症状でのご質問を頂くことが御座います。このような方の中には密かに不妊に悩まれ、なかなかご自身から「不妊」という言葉を発する勇気がなく婦人科一般の症状で最初のコンタクトを希望するお気持ちを察するに、不妊という症状が喪失感や自尊心に関るデリケートな問題の現れであると感じております。この事を踏まえ蓬莱堂では、常にメンタルな部分に配慮し、どのステップにある方に対しても的確なカウンセリングや鍼灸治療を行えるように準備し努力しています。全てのステップで治療中の方で鍼灸治療にご興味のある方は一度お問い合わせ頂ければ幸いです。
施術担当鍼灸師 榎本 守
不妊治療の進め方
ご夫婦が不妊かどうか分からず治療を迷われている方
ご夫婦間で不妊が気になり出したら、すぐに鍼灸の治療を開始するのではなく、まず不妊クリニックを受診することをお勧めいたします。不妊の可能性をスクリーニングして、もし妊娠に至らない原因が特定されたらその原因を取り除くことが重要かつ最優先になります。普通、不妊クリニックは婦人科ですので女性のスクリーニング検査を行うことはもちろんですが、男性の不妊に対しても検査を受ける事ができるのが一般的です。蓬莱堂で不妊症の周辺症状の治療を行っている方は、まず女性が検査を受けて異常がなければ次に男性が検査を受けていらしゃる方が大多数です。また、不妊クリニックを受診する事に抵抗のある男性の方は、泌尿器科でも造精機能、精路通過、性機能障害、精嚢や前立腺の炎症の有無などの男性不妊の原因とされる因子の検査ができるところもありますので気兼ねなく検査を受けることができるかと思います。
不妊スクリーニング検査で原因が特定された方
女性の検査は主に①内分泌・排卵因子②卵管因子③子宮因子の3つの不妊因子について調べます。
①の内分泌・排卵因子とは脳の下垂体というところからプロラクチンというホルモンの分泌が過剰になってしまう高プロラクチン血症や卵巣の一部である黄体から出る女性ホルモンのプロゲストロンの分泌が極端に少なくることが原因で黄体期が短くなってしまう黄体機能不全、卵胞に多くの嚢胞ができ月経異常を起こす多嚢胞性卵巣症候群、40才前に女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が低下し閉経と同じ状態になってしまう早期卵巣不全などについて調べます。
②の卵管因子とは卵子と精子の移動や受精し卵割を行う為の場である卵管に、感染症や子宮内膜症などによる癒着や閉塞の有無について調べます。
③子宮因子とは子宮内膜が傷つき内壁が癒着していないか子宮筋腫や子宮内膜症などの有無を調べます。
女性のスクリーニング検査で原因を特定された方は婦人科(不妊クリニック)での治療が中心となります。 蓬莱堂での鍼灸治療は①の内分泌・排卵因子が特定された方でクリニックでの投薬と併用することを条件にお受けいただくことができます。
男性の検査は前に記述した検査を行いますが、男性不妊で最も多い原因は造精機能障害です。また、その中でも症状として最多は乏精子症だと言われています。WHOの精液分析の正常値というものがあり、その数値より精子の状態が下回れば自然に妊娠に至るのは極めて難しいとされています。乏精子症の方で自然妊娠する方がいらしゃるのも事実ですが、自然妊娠にこだわることなく精子に妊娠しやすいような操作を加えた人工受精へと早期にステップアップした方が賢明のように思います。
不妊スクリーニング検査で原因がはっきりした場合は鍼灸では効果が期待できない場合が多くあります。原因疾患があり不妊状態のご夫婦で蓬莱堂の治療をご希望の方は必ず事前にご連絡下さい。
不妊スクリーニング検査で原因が特定されなかった方
スクリーニング検査で原因が特定されなかったカップルは、タイミング法、人工授精、体外受精へと治療がステップアップして行きます。
タイミング法は、女性の基礎体温を計測して排卵の時期を予測します。そしてどのタイミングで夫婦生活を持てば妊娠しやすいか指導を受ける不妊治療です。ご存知のとおり基礎体温には低温期と高温期があり、低温期の最後の日から体温の上昇が完了する3日間に排卵が起こります。排卵後24時間以内に受精が行われないと妊卵に至りませんので排卵後2週間で生理を迎えます。排卵日を挟んで2日間隔で4から5回程度1周期にタイミングを取ります。
一般的にタイミング法をはじめて半年を経過しても妊娠に至らない場合は、精子を子宮腔内に注入する人工授精を行います。夫婦生活を持つと精子は頚管、子宮腔内、卵管へと進んで行きますがその間に精子の数は減少してしまい受精の確率を低下させてしまいます。人工授精の目的は卵子にたどり着く精子の量を多くして受精の確率を上げることにあります。その為に事前に採精した精液の中より運動性の良い精子のみを集め濃縮して子宮腔に注入し卵子に出会う精子の量を多くし受精確率を上げることにあります。この時さらに妊娠の確率を上げる為に確実に排卵させる投薬を行うことがあります。性腺刺激ホルモンを増やすクロミフェンやhMG刺激を卵巣に与え排卵を誘発させる方法などです。
一般的に人工授精を最大で5~10周期程度行っも妊娠に至らない場合は、次のステップに進みます。これは精子と卵子、胚(妊卵)に人為的な生殖技術を行い受精させる方法で生殖補助医療技術(ART)と呼ばれています。人為的方法とは培養液の中で精子と卵子を受精させる体外受精(IVF)と顕微鏡により人為的に卵子内に精子を注入する顕微授精(ICSI)の2法より条件に合った方法を選択して行われます。
蓬莱堂での不妊症鍼灸治療をお考えの方
不妊周辺症状で鍼灸治療をお受けいただける方
蓬莱堂の不妊症の治療は主に機能性不妊の方を対象としていますので、不妊スクリーニング検査で原因が特定されなかった方で以下のような状態の方です。
①黄体機能不全、高プロラクチン血症はあるがその他の不妊因子のない女性
②タイミング法を実践中の女性
③人工授精を行う女性
④体外受精・顕微授精を行う女性
⑤不妊クリニックでの治療より鍼灸治療を優先させたい女性
(必ず蓬莱堂のカウンセリングを受けてから治療の適否判断をさせて頂きます。)
⑥不妊スクリーニング検査で器質的でない造成機能障害を指摘された男性
(必ず蓬莱堂のカウンセリングを受けてから治療の適否判断をさせて頂きます。)
不妊鍼灸治療をご希望の方
女性の治療は、生理周期に合わせて行います。蓬莱堂では生理が始まった日から排卵日までの間に、2~3回の治療を行います。治療と治療の間は3日以上1週間以内を目安にしています。生理周期は個人差がありますので人により回数が変化いたします。体外受精や顕微授精により採卵、移植を予定している方は、生理開始から採卵、移植日まで上記間隔で数回行います。特に移植(胚盤胞)後24時間以内に鍼灸治療をご希望の方はその日から逆算してご予約をお願いしております。詳しくはお問い合わせ下さい。
男性の治療は、鍼灸による効果が限定されますので、お問い合わせ頂きカウンセリングを必ずお受け頂くようお願い致します。また、男性不妊に対する蓬莱堂の鍼灸治療は器質的でない造成機能障害のうち精子量や運動性が乏しい方に行います。また、男性が原因の不妊の場合は、自律神経との関りが重要ですので、女性の周期に合わせて鍼灸施術を行うのではなく、定期的な通院が必要になります。
治療方法は、個人々の年齢、体質、治療の進行度などを考慮して行いますが、両手首の脈状(脈診)、舌(舌診)の状態、お腹(腹診)の状態を確認させて頂き場合があります。このような情報を下に刺激する場所(経穴)を選定し施術を行います。標準的にはホルモンの分泌(脳下垂体へのフィードバック現象も含む)と子宮内膜増殖に対応する場所(経穴)と骨盤内臓器への体液循環の正常化を目的として施行いたします。
治療をお受けになる時の服装は、両手の肘から先、両方の膝上から10センチぐらいから下、背部、腹部が主な治療箇所なので、そこが露出できる服装でお越しになるか着替えをお持ち下さい。
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詳しくはココ
不妊症(タイミング方の方)やその周辺症状の鍼灸治療をお受けになる場合は基礎体温を計測した記録をお願いしております。
ご不明な点はお気軽にお問い合わせ下さい。
不妊症に関する治療に多い質問集
蓬莱堂の不妊鍼灸にご質問のある方はお気軽にお問い合わせ下さい。
質問1
そちらで鍼灸治療を受ける場合、必ず不妊外来で検査をしなければなりませんか?
回答1
不妊の治療は漠然的に長く行うものではなく医学的に原因が特定できる器質的な状態の場合もございますので、不妊外来の検査は重要かと思います。しかし、初産以外で月経前症候群や月経困難症などの症状がなく、基礎体温を記録している方に限り治療をお受けいたします。
質問2
不妊治療をお願いしたいと思いますが女の先生を指定できますか?
回答2
申し訳ございませんが、蓬莱堂では不妊鍼灸ができる鍼灸師は男性のみです。しかし、治療を行う時には女性のスタッフが必ず院内に同席しています。不妊症に限らず婦人科系の治療の場合は患者さまと鍼灸師が1対1になる事はございません。
質問3
不妊鍼灸治療は健康保険が効きますか?
回答3
残念ながら健康保険の適用外です。蓬莱堂の治療費は1回4,400円(税抜)です。初診料や登録料はございません。しかしながら、不妊治療以外の治療を併用した場合や特殊な機械を使用した時はその分ご負担いただいておりので詳しくはお尋ねください。
質問4
治療をしてくれる鍼灸師の方の経験はどれぐらいですか?
回答4
30年以上の経験があり、日本鍼灸師会、東京都鍼灸師会、日本生殖医学会(旧:日本不妊学会)、に所属しており、常に最新の不妊医学の情報を臨床に取り入れるよう努力しています。
質問5
月経が来たら予約をするようにHPに書いてありますが、生理中でも治療はできますか?
回答5
エストロゲンは充実した子宮内膜を作るのに役立ちます。そのエストロゲンは卵胞の発育に伴い分泌されます。卵胞の発育の健全化を図るために、FSH(卵胞刺激ホルモン)が卵胞を盛んに刺激するわけですが、その時期が生理中と一致します。下垂体へのフィードバックを期待し刺激を入れることは有意義ではありますが、生理中のストレスを考慮するに生理後速やかであれば鍼灸の効果が期待できるかと思います。
質問6
体外受精をして今度、胚の移植を行います。移植前に鍼灸治療考えていますが効果はありますか?
回答6
体外受精(IVF)の方の場合、事前に成熟卵胞を採卵いたします。成熟卵胞に至る卵胞発育方法により着床の確率が左右されているように臨床的に感じております。最近は自然周期で卵胞を発育させる方法よりクロミフェン、hMG刺激により卵胞を成熟させ複数個の卵子を得る方法が多いために、自然周期で得られる厳選された卵子と微妙に着床する力が異なるのではないかと思います。現在の胚移植は特別な場合を除き一つの胚を移植するように決められていますので、その胚の力の補助に鍼灸治療は役立ちます。生理が来たら治療の予約を頂き移植日まで数回行うのが効果的です。
質問7
なかなか妊娠しないので不妊クリニックで診察を受けたところ、排卵しにくいからと言われました。鍼灸治療で排卵しやすくなりますか?
回答7
排卵はご存知のように卵巣から卵子がホルモンの作用で飛び出す現象をいいます。排卵がしにくいということは、生理から排卵するまでの日数が長いということになります。毎月一回排卵する人と三ヶ月に一回排卵する人とではそもそも妊娠の確率が違いますので、少ないチャンスを有効に受精へと導かなくてはなりません。排卵しにくいという状態だけでは人工授精や体外受精の対象にはなりませんので、排卵誘発剤によりタイミング法を実践するのが一般的です。排卵をしにくくする病気もありますがほとんどが複雑に作用するホルモンバランスの不均等によりそのような状態を作り出していると言われています。鍼灸治療ではまず、そのホルモンバランスの改善を目的に行います。生理周期を整えることで、自然周期のネガティブ・フィードバック作用による卵胞刺激ホルモン低下に耐えた優秀な卵胞を作ることに役立ちます。その為には、基礎体温の計測が必要になりますので、体温を記録したものをお持ちください。
質問8
黄体機能不全と言われました。鍼灸治療で改善しますか?
回答8
卵子とその付属液が流れ出たあとの卵胞には、血液が入り込み、黄体と呼ばれる組織が出来上がります。その組織から出るホルモンが黄体ホルモンで子宮の環境を妊娠しやすい状態に整えます。この時に体温も上昇し基礎体温の高温期を作ります。通常は排卵してから二週間で生理を迎えるわけですが、十日頃に生理になってしまうものを黄体機能不全と呼んでおります。当然、二週間の高温期が続かないと子宮内膜の状態は妊娠に適しませんので当然妊娠継続には至りません。鍼灸治療は卵胞期と排卵期に数回行うことにより状態の良い黄体期を迎えられるように行うのが効果的です。このような方の場合は鍼灸の成績は比較的に良いです。
質問9
人工授精を行いますが、鍼灸で何か着床率を上げることはできますか?
回答9
人工授精を行い通常数日で着床に至るわけですが、内膜の状態によってはせっかく受精卵が成熟しても着床できずに終わる場合があります。婦人科治療の前後数回鍼灸を行うことにより子宮の状態を整えるのに役に立ちます。
質問10
子宮内膜が薄いといわれました。どうゆう事でしょうか?
回答10
婦人科では以前はあまり子宮内膜の状態と妊娠の関係について主題的に語られる事は少なかったかと思います。今はどこの婦人科でも子宮や卵巣の状態を超音波で簡単に観察できますので、子宮内膜の厚さも手に取るようにわかります。そこで注目されるようになってきたのが子宮腔に生える膜の厚さです。ご存じのようにこの膜が剥がれ落ちて血液とともに流れだすのが月経です。内膜は成熟・更新を生理周期をもって繰り返します。更新されるときは常に新しく作られますのでその時の体調の状態や体質によっては妊娠に適さない場合があります。つまり内膜が薄いということです。すこぶる卵の状態がよく、子宮の血流がよい場合以外は、排卵の頃の内膜の厚さが6ミリに達しない方の場合はまず着床は難しいと言われています。鍼灸治療は子宮内膜の状態を整える事や良い卵を作る為によく行われています。
質問11
月経周期が普通より短く15日前後で次の生理が来ます。不妊の原因はそこにあると思いますが鍼灸で不順を改善できますか?
回答11
生理の周期が24日より短い場合を頻発月経といい、通常は排卵がなく不妊の原因となります。しかし、このような場合でも生理のたびに出血量や期間がまちまちですと、排卵期に出血する場合も考えられて2回の月経に1回排卵している可能性もあります。この場合は、性周期にかかわるホルモンの不具合が考えられますので、基礎体温表を分析する必要があります。排卵期に出血するものを中間期出血といいますがこの時を境に高温期に移行する場合は鍼灸治療で不順の改善に役立ちます。 基礎体温で高温期がない方はまず、婦人科でホルモン検査を受けその結果を考察し対応した方がよいです。
質問12
不妊の鍼灸治療を受ける時にどのようなことを聞かれますか?
回答12
蓬莱堂の患者様のほとんどは婦人科での治療も併用していますので、そこでの治療や方法、今後の予定など。また、生理周期や生理の状態(痛み、出血量、期間など)。 身体的や精神的状態はホルモンの正常化を妨げる場合がありますので、日常生活や食生活などをお聞きする場合もあります。また、最近婦人科でホルモン投薬が進むと基礎体温表をあまり参考にしなところもありますが、不妊治療中(タイミング法)は婦人体温計で基礎体温を記録した方がよいのでその記録をお見せ頂くこともあります。
質問13
タイミング法を実践しています。どのようなタイミングで鍼灸治療を受ければよいですか
回答13
タイミング法で一番重要なのが排卵日をできるだけ正確に把握することです。蓬莱堂の鍼灸治療はその日を受精1目として約5~6日で受精卵が胚盤胞まで分裂が進みその後24時間以内に着床すると考えると、排卵予測日から6~7日に鍼灸を行う日を決めます。その日から逆算して数回治療を行う方法を推奨しています。ただ、個人より治療の仕方は様々ですのでお問い合わせください。
質問14
妊娠のしたか、しないかの報告はしなくてはいけませんか?
回答14
特に妊娠の報告義務はありません。しかしながら、結果にかかわらずご報告いただけると嬉しいです。